前回の「
温泉の色の秘密 -その3- 」に引き続き、今回は「緑色・色の変化する」温泉に
ついてご紹介いたします。
(6) 緑色の温泉
無色透明の温泉でも、深い浴槽に湛えられた温泉は一般的には緑色っぽく見えます。これは、太陽光の赤色系の波長の光が水に吸収されるために起こる現象です。これとは別に、まるで蛍光色の入浴剤を入れたかのような鮮やかな黄緑色の温泉があります。
岩手県の国見温泉や長野県の熊の湯温泉などがその代表です。この黄緑色は、ごく最近の研究により、成分として含まれる多硫化イオンの黄色と、太陽光が炭酸カルシウムまたは硫黄粒子などによってレイリー散乱を引き起こして呈する青色との混色によるものであることが明らかにされています。多硫化イオンの黄色というのは、残念ながら製造中止となってしまいました「六一0ハップ」や「草津温泉ハップ」などの原液の色です。
また、日当たりの良い露天風呂に限って緑色を呈する温泉があります。その多くが、温泉中に混入したクロレラなどの藻類(植物プランクトン)が太陽の光を受けて急激に増殖し、緑色に見えます。水を入れ替えないプールがすぐに緑色に変色してしまうのと同じです。藻類は太陽の光によって爆発的に増殖するものが少なくありません。地下深くに存在している温泉水に成分として光合成をする藻類が含まれていることはありませんので、湧出後に増殖したものだということがわかります。

緑色の温泉(岩手県国見温泉)

緑色の温泉(長野県熊の湯温泉)
(7) 色の変化する温泉
温泉は湧出後の環境変化により、エージングと呼ばれる質的な変化を引き起こします。これにより、温泉の色も常に一定しているとは限りません。新鮮な源泉が注がれてからの時間の経過や天候、降水などによる地下水位の変化などによって温泉の色が変化する例が知られています。中には、地震の発生後に色が変化した例も報告されています。
和歌山県の湯の峰温泉の共同浴場"つぼ湯"は、色の変化の言い伝えが伝承される温泉で、現在も乳白色~乳青色などの色の変化が認められます。"つぼ湯"の場合は、浴槽から源泉がじかに湧いており、地中で不安定な状態で存在していた温泉水が、地表へ出たとたんに地表の環境のもとで安定化の方向へ化学的に変化するため、光の散乱の状態が変化し、その結果色が変化すると考えられます。
長野県の五色温泉も、その名の通り色が変化することで知られている温泉です。温泉の横を流れる川の水位の変化が温泉の色に影響していると言われています。
和歌山県の雲取温泉は、2004 年に発生した紀伊半島沖地震の後、これまで薄かった温泉の色が濃くなった(乳白色に変化した)と新聞で大きく報じられました。

色が変化する温泉(和歌山県湯の峰温泉)

色が変化する温泉(長野県五色温泉)