前回の「
温泉の色の秘密 -その2- 」に引き続き、今回は「茶色・黒色」の温泉に
ついてご紹介いたします。
(4) 茶色の温泉
茶色に濁る温泉は鉄分を含む含鉄泉です。地中より湧き出したばかりはほとんどが無色透明です。温泉が地上に湧き出すと、空気中の酸素に触れ、イオンとして溶け込んでいた鉄分が酸化されて酸化鉄(いわゆる"さび")の茶色い沈殿物を生じます。この沈殿物(析出物)の懸濁(けんだく)により茶色く濁ります。
温泉に鉄分が含まれることは決してめずらしくありません。ごく少量の鉄分が含まれているだけでも酸化によって茶色くなります。このため、うっすらと茶褐色に濁る温泉は全国にたくさん存在しています。
緑茶に鉄分を含む温泉を注ぐと、お茶の中のカテキンに含まれるタンニンという成分と鉄分(鉄イオン)が反応して真っ黒になります。
透明の温泉(右)が着色していく(左)
様子(岐阜県下島温泉ひめしゃがの湯)
茶色く変色したひめしゃがの湯の浴槽
(5) 黒色の温泉
東京周辺には、「黒湯」とよばれる黒色の温泉が多く存在します。極楽湯の横浜芹が谷店(神奈川県)や和光店(埼玉県)なども黒湯の温泉です。
現在の東京湾周辺の地層には、太古の海底に繁茂した海藻などの成分(腐植質)が含まれており、そのような地層から採取される温泉水には、腐植質起源のフミン酸が含まれています。フミン酸とは、植物が微生物によって分解されてできる最終の生成物で、土の中でアルカリに溶け酸で沈殿する有機物です。
温泉中にフミン酸が含まれると、フミン酸が太陽の光のうち目に見える光の部分(可視光線)を吸収するため、光がなくなり温泉が暗黒の黒色に見えます。
北海道の十勝地方には、通称"モール泉"と呼ばれる透明感のある黒褐色の温泉があります。「モール」とはドイツ語のMoor(泥炭土)に由来するもので、この温泉も東京周辺の黒湯と同じく、温泉に含まれるフミン酸が光を吸収することにより生じます。
その他に、硫化水素型の硫黄泉で、温泉水中の硫化水素が鉄分と反応して黒色の硫化鉄 を析出させ、"湯の華"や沈殿物として温泉の中に混じり黒色の懸濁を生じることがあり ます。栃木県の塩原元湯温泉の"墨湯(すみゆ)"がその例です。同じように、長野県の 五色温泉や宮城県の川渡温泉、和歌山県の勝浦温泉など多くの温泉で黒色の"湯の華"の 生成が知られており、"湯の華"の量が多い時や浴槽が撹拌された時など、温泉が黒っぽい灰色に見えることがあります。
黒湯の極楽湯和光店(埼玉県)
黒色の塩原元湯温泉の"墨湯"(栃木県)