よく「温泉は五感で楽しむもの」と言われます。なるほど、温泉の色、香り、肌触り、源泉が湯船に流れ込む音、温泉の味などは、温泉入浴の魅力や満足感を大きく左右する要素です。今回は、その中の「温泉の色」について話題にしたいと思います。
温泉の湯の色は実に多彩です。大きくは、無色透明、乳白色、灰色、黒色、茶色、赤色、青色、緑色などに区別できますが、さらにその中間色のような色もあり
ますね。また、同じ温泉であっても、日によって色が変化する事例も知られています。温泉にはなぜいろいろな色があるのでしょうか。
(1) 温泉の色のメカニズム そもそも"色"というのは絶対的なものではなく、光の質(どのような波長の光かということ)と、光が当たって実際に色を出す物の質や状態との関係で決まります。したがって同じ物でも当たる光が異なれば違う色に見えることもあります。例えば、高速道路のトンネルの中ではオレンジ色のナトリウムライトの光によって赤い車が黒っぽく見えたりしますね。
無色透明であるはずの水が、川の深いところでは緑色に見えたり、浜辺から眺める海がブルーに見えたりするように、水の色は太陽から注がれた光の吸収や散乱といった現象によって起こるものです。温泉の色も基本的にはこのようなメカニズムが関わっています。 水の分子や温泉の成分として含まれるイオンやその他の物質によって光が吸収されて色を呈したり、コロイド粒子という非常に小さな粒子が存在することにより光が散乱して色を呈したりします。さらには、比較的大きな含有物質(火山泥など)や沈殿物(いわゆる湯の華)などの縣濁により色(にごり)が生じることもあります。
太陽の光のうち、私たちの目に見えるのは波長が380nm~780nmの間の可視光線と呼
ばれる部分です(図参照)。
可視光線のうち、波長の短いものは紫から青色に見え、波長の長いも のは赤色に見えます。可視光線のすべての波長の光が同じ強さで混じると白色に見えます。仮に温泉中に青色の波長の光だけを散乱させる粒子があれば、他の長い波長の光は透過し青色の波長の光だけが散乱して(レイリー散乱)私たちの目に飛び込んで来るため、温泉が青く見えます。ちなみに、空が青く見えるのも、太陽光のうち空気の分子などで青色の波長の光だけがレイリー散乱して、私たちの目に青色の光が飛び込んでくるからです。また、温泉中にすべての波長の光を散乱させる大きな粒子が存在すれば、すべての波長の光が散乱するため(ミー散乱)、温泉は白色に見えます。
温泉中で特定の色の光が吸収されると、温泉は残りの光が混じり合った色に見えます。水や無色透明の温泉が、深いところで緑色や青っぽく見えるのは、水の分子などによって赤色系の波長の光が吸収されて、緑や青色系の光だけが川底や温泉浴槽に当たるからです。