HOME > 店舗のご案内 > 温泉あらかると > 温泉コラム > 第1回 温泉とは何か

古来、人々は、普通の地下水(いわゆる"常水")と、温度や成分の面で明らかに区別できるような地下水を「温泉」または「鉱泉」などと呼んで、井戸水や山水などとは違った使い道で利用して来ました。
特に、湯沸かし器のような便利なものがなかった時代では、温かいお湯が自然に湧き出してくれる温泉がさぞかしありがたい存在であったことはまちがいありません。また、味やにおいや色などからその療養効果を察し、積極的に利用しようとしてきたことも、ごく自然な成り行きであったに違いありません。
すなわち、人々は暮らしの中で「温泉や鉱泉」を経験的に認識していたといえます。
昭和23年に温泉法が制定され、温泉は、温度や含まれている成分の客観的な数値によって定義づけられました。
温泉法第2条によると、温泉とは「地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表(略)に掲げる温度又は物質を有するもの」と記されています。別表の内容を要約すると、温度が25℃以上あるか、温泉水1㎏中に溶けている物質(ガス性のものを除く)が1g以上含まれるか、指定された18種類の物質のうち1つでも規定量以上含まれていれば温泉ということになります。
この温泉法は1911年のドイツのナウハイム決議を参考にして作成されており、温度が25℃以上のものを温泉と規定しているのは、ナウハイム決議がドイツの平均気温の20℃以上を温泉としたのに対して、日本では台湾南部(温泉法制定時に日本の統治下にあり、日本で最も気温の高い場所)の平均気温の25℃以上を基準値として設定していると言われています。
地下水の温度はその土地の平均気温とほぼ同じくらいですので、国内で一番高い平均気温より温度が高い地下水というのは、普通の地下水とは違って何らかの熱を受けた特殊な水であるという考え方によるものです。
いずれにしても、温泉法第2条に示された数値は、常水(いわゆる普通の地下水)と区別するための限界値であり、入浴や飲泉に際しての療養効果があるかどうかをそのまま基準としたものではありません。
温泉法による温泉の規定は、あくまでも人為的に客観的な基準を示したもので、「それでは一体、25℃の温泉と24.9℃の温泉でない地下水と本質的に何が違うのか」といった、基準値前後における自然科学的な評価の上での疑問が浮かび上がってきます。基準値を設定して客観的に定義することの難しさがそこにあります。
私は、温泉や鉱泉に値するかどうかの価値づけは、「人々の暮らしにどれだけ恩恵をもたらしてきたか」という視点も大切ではないかと思っています。温泉に入浴する際、単なる地下水との違いをどれほど実感できるかは読者のみなさんの注意深い観察力にかかっています。